ずっと昔、仲間たちと船で沖釣りに出た。
釣りとは言うものの、本格的にやろうとしているのは、船主の友人ともう一人くらいで、あとは日光浴半分、釣り半分といった態だった。

陽はまだ高いところにあったが、そろそろ帰ろうということになった。
そのとき、「流していいかな」と友人の一人が小さなガラス壜を私に見せた。
壜の中には紙片が折りたたまれて入っていて、コルク蓋の部分は蝋で密封してあった。
「なんて書いたの」と訊くと、静かな笑みを浮かべて、友人は首を振った。
潮の流れを船主に尋ねた。
広大な太平洋のど真ん中に向かって流れている。と彼は言った。