ASHINO KOICHI +plus
彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ
ガラスの振幅
2012/01/18
Wed. 00:35
小さいころ、砂浜で濯われた、角のとれたガラスのかけらを見つけるのが大好きだった。
色とりどりのそれらは、曇った鈍い光を帯び、手の中で心地よい重みをもった。
どんなかたちでもよいというわけではなく、人工的なラインをもたず、最初からその姿で在った、と感じさせるものでなくてはならなかった。
その小さなガラスたちは夏ごとに増えていき、大きなジャムの瓶をいくつもいっぱいにするほどになった。

小学校を卒業すると、夏休みに家族で行く海が遠のく。
しばらくはその鮮やかなかけらで満たされた瓶は、机や棚の上の本が倒れないように、重しとして本の横に存在していたが、いつの間にかなくなってしまった。
どこにやったんだっけ、と今ふと思う。

ガラスほど、振幅の大きい表現が可能の作品素材はないと思う。
緊張から弛緩まで。
冷たさから熱さまで。
鋭敏から鈍重まで。
崩壊から収斂まで。
悠久から瞬間まで。
周囲の空気を一瞬にして変えてしまう力も、置かれた環境に染まってしまう力もある。

中学の理科の時間に、ガラスは液体だということを教えてもらって驚愕したことを思いだした。
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