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ASHINO KOICHI +plus

彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ

不憫なバタースコッチ 

2017/12/11
Mon. 04:24



20年くらい昔、横浜ランドマークタワーに、なんとかというアイスクリームのお店があった。
あまり他所では見ないような味も多くあって、珍しもの好きの私はその中からバタースコッチを選んだ。


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「バタースコッチ」と声に出した瞬間、冷凍庫を挟んだ向こう側の店員すべてが息を飲んだのがわかった。
私の注文を受けた女性の隣にいた学生アルバイト風の男子が、悪魔に憑依されたが如く目を剥いて、客である私に挑むように言った。
「でた、バタースコッチ」
頼んではいけなかったのか・・・、禁断のバタースコッチだったのか・・・。
お店がオープンしてからずっと手をつけられることのなかったバタースコッチなのかもしれない。
このまま何年も、お店が無くなるまで、バタースコッチを無垢で残しておきたかったのかもしれない。
スタッフ全員でバタースコッチを守ろう!がスローガンだったのかもしれない。
だが、バタースコッチの立場ではどうか。
ひっそりと誰かが注文するのを待っているバタースコッチ。
来る日も来る日も、他の味がひょいひょい飛立っていくのを横目で見ていたかもしれない。


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バニラやチョコが口々に言う。
「いつも同じ服ね」
「おまえ哲学する時間あっていいな」
手付かずの不憫なバタースコッチ。他の味にまでばかにされて。
では私の立場ではどうか。
コンビニのレジ横にあるおでんのはんぺんを私は思い出す。
水面から出た己れの体表で外気のすべてを受け止めるはんぺん。
このバタースコッチは食べても大丈夫なのだろうか。
このお店はオープンしてからどのくらい経ったのだろうか。
氷点下20度に耐性のある毒素とかないよな。
様々なネガティブ要素が頭に浮かぶ。


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私はコーンに載ったバタースコッチをお姉さんから受け取った。
お姉さんは私の脳裏に渦巻いた三つの物語を知るはずもない。
お姉さんは笑顔だったし、もちろん私も笑顔だ。



まあ、売れなくても毎日の混ぜ返しのようなものはあるのでしょうけれど。


 

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