ASHINO KOICHI +plus
彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ
闇が降りる前に
2014/10/09
Thu. 04:34
ちょうど月に向かって自転車を漕ぐかたちになった。
食はすでに始まっていて、左下をかじられた月は不気味な赤さで浮いていた。
目的地に着くまでどれくらい欠けるだろうか、いまから数パーセント侵蝕が進むだけ、と適当計算で出る。
目視では感じられないかもな、つまらないな、と思った。
だが、常に視界の中にありながら、ペダルを一回転させるたびに刻々と月は暗さを増していった。
角を曲がり、月を見失い、また角をいくつか曲がって、また本道に戻る。
たったそれだけの、時間でいえばほんの何十秒かのことなのに、それだけで大きく月は欠けた。
どんどん月は無くなっていった。
やばい、早く着かないとやられる、と思った。よくわからないけれど。

目的地に着き、自転車を停め、月の見える場所に出る。
月は、家を出た頃とほとんどかたちが変わらないように見えた。
[edit]
トラックバック
| h o m e |