ASHINO KOICHI +plus
彩書家・蘆野公一の日々のつれづれ
窓外
2015/03/27
Fri. 05:17
電車は混んでいた。
文字を追うのに疲れ、本を閉じた。
前のシートに座るメガネをかけた痩せた若い男は、スマートフォンを極限まで顔に近づけ、画面上で指をせわしなく動かしていた。なんだか勤勉な虫のように思えた。
駅でも無いのに、電車がスピードを落として止まった。
緊急停止信号の車内アナウンスがあった。
陸橋の上のようだった。
晴れた日には富士山が綺麗に見える場所であったが、吊革につかまる疲れた男の姿しかそこには無かった。
ため息が出た。
時間が戻れば、時間を戻せれば、そしたらもっとうまくやれるのにと思った。
アナウンスが流れ、電車はゆっくりと動き始めた。

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